タイ宝石鑑別・仕入れの旅③チャンタブリ宝石市場での買い付け

チャンタブリ 宝石市場 買い付け

今回のタイ仕入れでは、バンコクだけでなく、チャンタブリのジェムマーケットでの買い付けも行いました。

チャンタブリはバンコクから車で4時間ほど離れたタイ北西部にある地方都市。

カンボジアが近く、カンボジア産の原石が持ち込まれることから、複数の研磨工場が存在します。平日研磨された石は、土日に開かれるジェムマーケットでバンコクのインド系業者や世界中から来た業者に販売されています。

流通する石の多さから一部では「色石買い付けのメッカ」とも呼ばれており、海外で買い付けする宝石バイヤーなら知らない人はいない市場です。

チャンタブリ 宝石市場 様子

市場では露店や店舗での販売も行われているものの少数で、基本的にはバイヤーとブローカー(宝石オーナーの石を代わりに販売する人)の個人個人のやりとりで販売が行われています。

仕入れをしたいバイヤーは机と椅子を借りて欲しい石を紙に書いて提示して待っていると、ブローカーが石を見せてきます。気に入ったら値段交渉し、合意すれば購入、、というのが一般的な流れ。

完全個人で仕入れを行う場合と、ブローカーハウスと通す場合の2パターンがあり、前者は1日二千円ぐらいで場所を借りて完全個人でブローカーとやりとりするパターン。(インド系業者が多いです)

ブローカーハウス チャンタブリ 宝石市場

後者はブローカーハウスというブローカーの仲介業者に購入金額の10%を支払い席を借りる方法で、仲介業者を通した場合、業者によりますがドリンクをくれたり、返金に応じてくれたりとサービスがついています。

日本のバイヤーはブローカーハウスを通す場合が多いらしく、私もブローカーハウスで買い付けを行いました。

席に着くと、日本人が珍しいらしくものすごい数のブローカーが群がり、我先にと石を見せてきます。

チャンタブリ宝石市場

バンコクの業者が仕入れにくる場所なので、バンコクで買うよりは安く、かつたくさんの石を見ることができますが、基本的に相場の5〜10倍の値段で交渉してくるので、相場感がわからないと痛い目に遭ってしまうと感じました。

また、合成石や模造品を売ってくる悪質な業者もいたため、購入には宝石鑑別の知識が必要だと思います。

それでもまた訪れたいと思ったのは、原産地に近いからこその興味深い出会いがあったから。

チャンタブリ 宝石市場 かわったもの

こちらはアクアマリンを七福神的な人物に加工したもの。素晴らしい技術力ですが誰が買うのでしょうか…。

チャンタブリ 宝石市場 仕入れ

バイカラートルマリンのロット。バイカラートルマリンは日本でも見かけますが、ここまで選び放題なことはそうそうないかも。

ブローカとのやりとりのなかでも、大きな学びがありました。

ブローカーはおばちゃんが多いのですが、なかには石を研磨した職人が直接販売にきて、指を痛めながら研磨した石だとアピールしてきたり、高校生くらいの制服を着た子が石を売っていたり…。

私たちが日本で仕入れている石がどのような人の手を介して日本に届けられているのか実情を知ることができ、ジュエリー業界に端くれとしてですが関わるものとして考えさせられました。

ブローカーは販売した時のマージンがそのまま収入になるようで、売ればければ収入が0円の日もあるとか。

そういう話を聞くと、買ってあげたくなってしまいますが、そこは心を鬼にして、身につけて心が揺さぶられるか、を基準に妥協せず一つずつ石を見ていきます。

チャンタブリ 宝石市場 仕入れの様子

トルマリンやアクアマリン、タンザナイト、ジルコンを探していましたが、数千個以上の石を見て、美しさと価格の折り合いがついて仕入れたいと思えたのは数点ほど。

苦労して見つけた石だからか、仕入れた石への思い入れがとても強くなります。

今回仕入れた石は11月の展示会でジュエリーに仕立ててお披露目します!

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